前回の続きじゃな。
涙は強い味方になるというお話を書いていて思い出したことがある。
涙はもしかすると、一言では言い表せないすごい力を持っているんかもしれん。
オットの手帳にそんなことが書いてあったことを思い出して今、探しているところじゃ。
そういえばオットは、あたしと「闘うこと」を一度もしなかった。
闘う意味がないことを知っていたとも言える。
それは、、
あたしを勝たせることで、オットの立場が確保できるから?
あたしが気分良くいることで、オットの気分もよくなるから?
あたしが満足する選択を取っておけば、楽だから?
と、あたしは勝手に思っていたが、それは違った。
深いので、全集中で読んでおくれ( ´ ▽ ` )
オットの手帳からの抜粋。
さちこの夢はなんだろう。。
夢を閉ざしている理由はなんだろう。。
夢を見れない環境に置いてしまっているのは僕かもしれない。
イライラしている理由はなんだろうか。
聞いても「大丈夫」としか言わない日は大丈夫じゃない。
朝起きれなかった自分を責めているのか。
弁当のワンパターン。気にしていない
僕の好きなものには違いないから。
実は、いつも同じでも問題ない。
好きだから。
僕の「ちょっと待ってね」
は、さちこにとっては1ヶ月にも思えるらしい。
すぐやろう。
ため息が多い。寝る前に、お互い天井を眺めながら聞いてみよう。
面と向かうと辛い話は難しい
今日も僕の負け。さちこには敵わない。颯爽としてるなあ。
いい表情だ。罰として草むしり2時間。終わったら僕もスッキリ。
でも、でも、でも。これはナシ。言いすぎた。やめよう。
今日は僕が黙ってしまった。さちこの言葉を反芻しすぎた。即答すべし。意味がわからない時は聞けばいい。遠慮する方が悪い
さちこはすごい。「あなた、タッチ」はいおしまい。
見事な喧嘩の終わらせ方。感動した。
タッチの理由。
「あたしのこの辛い気持ちを、あなたの気持ちとタッチ交代」
大胆すぎて笑えた。好きだ。
今日もため息。何が辛いのかがわからない。未来が不安。
「あなた、先にいかないでよ。あたし寂しいのは嫌いなんだから。」
もちろん僕が先に逝くよ。だが大丈夫。寂しい思いをさせないように、今から準備しとる。
また今日も、僕が先に逝くことを極端に嫌がる人。
愛されていることがわかるが、しつこいぞ。
でもありがとうさちこ。
手に力が入らなくなってきている。僕の体の異変をさちこに気づかせている。
不安は増すばかりか。喉の調子もますます悪い。いっそ声帯を取るか。
あなた、死ぬの?
ダイレクトに聞き過ぎだ。かわいいやつめ。
あなたが逝くなら私もじゃ。
残して行ったら許さんけ。
たたってやるけ。な。
って、たたるにはまず死なんにゃおえんぜ
君が怒っても、ちっとも怖くないんだよ。
君の顔は、可愛すぎるんだ。
さちこよ。
君に会えたことでたくさんのいいことがあった。
どれが一番とは言えない。
全てが最高の思い出だ。
下り坂の人生だったのに、登り坂に大転換できた。
そう言ったら君は、登り坂ってしんどいじゃろうが。
だって。
確かに。現実はしんどいかもしれんけど、最高の景色を見るために登る坂がしんどくても楽しいもので、その途中途中で休憩して、木の実を食べながら、木陰で休みながら、お茶を飲み、おにぎりを食べ、また歩き出し頂上を目指す。疲れたら手を繋ぎ引っ張り合い、大きな岩があればどちらから背中を押し、支えて超えていく。
これが僕のいう、登り坂の人生。たのしかろ?
そうね。なるほどじゃわ。のぶさん素敵。
さちこが死んでしまうかもしれない。
腎臓の調子が悪い。散歩をやめてしまったことが原因かもしれない。
水を飲む習慣を止めてしまったことが悪かったかもしれない。
嫌だ。
さちこの調子が良くない。顔色が黒い。黄疸か?
病院での診断が甘いのではないだろうか。
このままではダメだ。
病院を変えよう。
自分で自分の体のことはわかる。
そういうから信じてきたが、違う。
僕が無理やりでも連れて行かないとダメだ。
一緒に行くしかない。
僕の足よ。
もうしばらく歩かせてくれ。
さちこに僕の命をあげたい。
さちこに僕の力を分けることができないだろうか。
もう少し食べて欲しい。
狂いそうだ。お前が先に逝ってはならん。絶対にダメだぞ。
急激な衰弱。
僕の全てをあげるから。頼むから、生きてくれ。
頼むから、死ぬんじゃない。
死ぬな。
さちこ。
生きろ。
神よ仏よ。大いなる存在よ。いや、もうなんでもいい!
さちこの全ての苦しみを、我に与えよ。
さちこの全ての痛みを、我に与えよ。
それができぬのであれば、各々方の世界を安寧なものにはせぬ。
バチなら、全て我に与えよ。
我が命など、さちこの笑顔の前では極小。
この世界に必要なものを消すな。
我が涙よ枯れてしまえ。
乾き切ったこの身に降る雨は君だ。
枯れてひび割れたこの心にいつも君は豊かな潤いをもたらしてくれた。
君が居なくなったら
僕は全てを喪うことになる。
枯れてしまえ。
涙よ、全て出切ってしまえ。
そうすれば、さちこは帰ってくる。
のぶさあん。いつまでも泣いとらんで。アホやねえ。
と言ってくれる。
って、、のぶさあん。。
何が準備しとる。じゃろか。何が枯れてしまえ。じゃろか。アホやねえ。ほんまに。あたしを泣かしてからにもう!
胸が苦しくなるほど、あたしは、この人に、心から、愛されていたんじゃ。
あたしが倒れ、一時危篤にまでなった時期があった。
その時の、オットのメモを、なるべく拾って書き記した。
オットは命をかけて、あたしの健康を祈ってくれたことがわかる。
あたしの代わりに死んじゃったのかも、と思えるくらい。。
あたしと闘うことをしなかったのではなく、闘って勝つ意味がなかった。
だって、あたしのこと、大好きなんじゃもん。
ってこと。
オットが亡くなってから1年と3ヶ月と1日。
ようやく、じっくり手帳を読むことができる今がある。
書いて遺してくれたことで、思い出が鮮明に浮かび上がってくる。
その効果は絶大じゃ。
なんの効果かって?
誰かに好かれることによる、心の充実。
充実していると他人にも優しくなれる。
優しくなると、他人もあたしに柔らかな笑顔を分けてくれる。
その笑顔は連鎖していき、関係ない人まで微笑む。
微笑みは、幸せホルモンを出してくれる。
幸せを感じ続けていると、肌艶がようなってきて気持ちも上がる。
気持ちが上がると化粧でもしようか、となる。
化粧すると、ナアスのテンションが何故か上がる。
テンション上げ上げのナアスの動きは、見ていてすこぶる清々しい。
その空気感の中であたしは心地よう居られることになり、効果絶大。
あたしはまだまだ枯れとらんでの。
たくさんの人が、涙のお裾分けを下さるけえ。
まずます潤って、どんどん溢れて、こうして書く力を頂いとる。
だから、
ありがとう。のぶさん。
あたしも、あなたがそばに居てくれるから、耐えられるぞ。
もう離れんとってよ。
ずっと一緒じゃけの。
〜ゾンビより愛を込めて〜
▽オットの手記による、実話を元に、ドラマ脚本書きました▽
いよいよ第一話より配信スタートしました!!