ゾンビさっちゃんのラブ全開!

もうすぐ70歳になる余命宣告を受けたがんサバイバー。 病室でブログを開設!

教育講演会「母の愛」6 大切な友達

<昨日の日記>の続き


中学一年生という多感な時期に、とてつもない失敗をしたくまさん。クラスのみんなが自分を白い目で見ている気がするほど、先生からも、友達からもがっかりされてしまう。

家に帰って、その様子を見たお母さんが声をかけるところから今回は始まります。

続きをどうぞ。

 


僕の左手を見た母が、自分が一番痛そうな顔をして言いました。

「頭を打たんで良かったねお兄ちゃん。」

包帯で巻かれた腕をそっと触って、早く治りますようにと祈る顔をして、また言いました。

「左手で良かったね」

確かに、左手で良かったんです。何をするにも右手で生活しておりましたので。さらに三角巾を見て母はこう言いました。

「なんかかっこいいね!」

良かったことを探してくれて、どんな姿になっても褒めてくれる母でした。かっこいいと言われ、単純ですね。それで僕も気分良くなって、晩ごはんの前、母に今日あったことの一部始終を話していたんですね。腕を上下にしゃくったNくんの話も。

すると、母が急に顔色を変えまして、そのまま階段下にある、ダイヤル式の黒電話の前に行き、クラスの緊急連絡網で電話番号を調べ始めたのです。不安になった僕は

「どうしたのお母さん?」

 

そう聞くと、一度僕の左手を見て、僕の問いには答えず、ただ黙って電話をかけ始めました。

 

そして、呼び出し音が鳴ったまま受話器を僕に渡して、Nくんを呼び出しなさいと一言。

受話器を受け取りながら、正直、僕はええーーーーっ!!!やめてよお母さん〜!!と思いました。母は、僕の腕を上下に強くしゃくった彼に、直接文句を言うつもりなんです。どうしよう。

いやいや、そんなことされたら、明日の学校が気まずいぞ〜と思いながら、母の静かな剣幕に押され、電話にNくんが出てくれたあと、言われた通りに母に受話器を渡しました。

母は、とても冷静でした。

「こういちの母です。初めまして。今日は本当にごめんなさいね。こういちが怪我をしなければ、みんなでサッカーができたのに、それができなくなってしまって。」

電話口から漏れ聞こえてくるNくんの動揺がこちらにも伝わってくる「は、はい。」でした。

「でもね。私は、思うんです。骨折をした腕を握ってそれを上下に振ってしまうと、病院で合わせてもらって固定した骨がずれてしまうの。それって想像できた?」

僕は、もう、どきどきが止まらず、お母さんの横顔を見ながらこの時間よ早く終わってほしい、とばかり考えてました。Nくんは、同じ部活でいつも仲良くしている気のいいやつだったので、僕は好きだったのです。しゃくったのは、仲良しだからそれが許されると思ったからやったと思うのです。そのあたりを僕が母に伝えていなかったと、電話の最中に思っても後の祭り。だからどきどきしていたわけです。

しかし、その心配は杞憂に終わりました。

おそらく、Nくんの話し方で、察しがついたのかもしれません。

最後は、

 

「うちのこういちは私に似て、少しのんびりしてるかもしれませんが、どうか、助けてやってくださいね。よろしくお願いします。こんな電話でごめんなさいね。ありがとう」

と言って、電話を切りました。そして、そのまま平然と晩ご飯の準備に戻っていったのです。

翌日。

Nくんは僕に会うなり、

「こうちゃんごめんな。昨日はあんなことして。」

「ううん。僕の方こそごめん。せっかく楽しみにしていた自由時間をなくしてしもて」

まるで中学生日記(テレビ番組)みたいなやりとりの後、母の話題になりました。

「こうちゃんの母ちゃんってすごいなーー。俺の母ちゃんはあんなこと言わん」

となり、あんなことってなんだろうと思い、聞きました。

「電話をとってから、どっかで絶対怒られると思ってたのに怒らんし、友達が痛がっている時に、それをわかってあげられてなかった俺のあかんかったところをすげー反省できたし、でも全然嫌な気持ちになることもなかったし、でも本当に悪いことしたな〜って思えたもんなあ。」

なるほど。。そう感じたのか。

「で、あんなことって?」


Nくんは、そのあんなことをサラッと言った。

「あなたがもし、大切な友達から同じことをされたらどう思う?」

って。そこ、一番効いたわ。

そういえば、母はそう言っていました。Nくんはそれに対して最初、何も答えなかったのです。考えている時間。想像していた時間があったわけです。母は、待ちました。

Nくんは言いました。

「絶対に嫌です。怒ります。でもこうちゃんは怒りませんでした。」

それに安心して、母は矛を納めたのです。

つまり、母の質問には、子どもに対して何かを聞く時の大切なポイントが隠されていたのです。

まず、「あなたがもし〜されたら」というフレーズは、相手に想像してもらいたい、という気持ちの表れです。相手はそれを言われると、一瞬でもそれをイメージしてしまいます。

そして「どう思う?」と尋ねられれば、そのイメージを言葉にする流れを作れます。

子どもに考えさせて、自分の答えを出させる言葉としてはとても使いやすいワードになります。

頭ごなしに、「そんなことやったらあかんやろう!」では、うわあ怒られた!早く通り過ぎるのを待とう。となり、子どもは考えることをやめてしまいがちです。

母が矛を収めることができたのは、相手がちゃんと理解した、とわかったからです。自分だったらそんなことをされたら絶対に嫌だ。つまり、もう2度としない。ということですね。

それと、「でもこうちゃんは怒りませんでした」でつまり、Nくんをその場で許した息子が居た、ということがわかったのです。そこに親が出ていく必要はなかった、と理解したのです。

さらにいえば、「大切な友達から」というキーワードがすごいんです。つまり、Nくんのことを、僕にとって大切な友達であるということを、含めて言っているということなのです。

当時の「こういち」にとっての「大切な友達Nくん」から腕を上下されたこととかけて、あなたがもし、逆の立場で、自分にとっての大切な友達から腕をしゃくられたら辛くないですか?という問いかけになっているのです。

つまり母は、Nくんが「こういちの大切な友達」であることを電話の中で気づき、理解して、いつもこういちを大切に思ってくれてありがとう、と言ったことになるのです。

お礼を言いながらも、相手を反省させているという高度な技を使っていたのですね。

Nくんはそれ以来、さらに僕の大切な友達として、部活でも、遊びでも、いつも寄り添ってくれる人になっていきました。2年生の時に起きた事件でも活躍してくれます。

母の怒りと、相手に対する言葉の選び方と使い方と、褒め方と伝え方。これをNくんからすげーなと言わしめた母は、今後の僕の岐路で必ず登場してくることになります。

続いて、2年生の時のお話に移ります。

 

 

つづく

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