今日も福井のみぃちゃんよりお届けいたします。
「のぶさんからのビジネス講座」というシリーズで、いつくかをご紹介しましたが、
のぶさん(一昨年3月ご逝去)からいただくメールは、奥様であるさっちゃんのことであったり、お二人で出かけた旅のお話であったり、くまさん情報であったり、私への貴重なアドバイスであったりと、多岐に渡る内容で、とても楽しいものでした。
メールのやりとりが始まった当初は、日々忙しくしているくまさんへの連絡事項などを、代理で私に確認するようなものからのスタートでしたが、
すぐにそんな事務的な内容はごく一部となり、ほとんどが、私やくまさん、私の会社などに心配りしてくださる、愛情溢れるメールでした。
楽しく、嬉しく、ときには厳しく、また不思議で驚かされるような内容もあったりと、受信BOXにのぶさんのお名前のメールが届くと、心がワクワクしたものです。
今日は、そんなメールの中からまたひとつ、不思議で、心温まるお話をご紹介したいと思います。
のぶさんからきた、ある日のメールより。
私は、これから小説を書いて参ります。指が少しづつですがリハビリで動くようになってきています。
そう決めてから、体力が戻り始めております。
そう祥子に伝えてから、祥子の状態も良くなってきています。
実は、こう思えたきっかけがございます。
こう始まったのぶさんからのメールは、またしても不思議な世界を語るものでした。
当時は、さっちゃんは入退院を繰り返し、のぶさんご自身も声帯の摘出手術をされたりと、ご夫婦でたいへんな日々を過ごされていた頃でした。
うちの近所に昔からやってる居酒屋がありまして。
そこの店主が私の3つ先輩で、私たちのために「作りすぎた手料理」という愛情弁当を毎週土曜日に届けてくれているのです。無料で。
私たちは長らく動けず、何もできず、こんなに迷惑をかけるくらいならいっそ。。。
と、マイナス思考ばかりの暮らしでしたから、店主の優しさには心から救われておりました。
その彼が先週の土曜日。弁当を渡しながら言うのです。
「娘が帰ってきたんじゃ」
と、嬉しそうに。
おや?
と思いました。普段はもう話好きで、いつもならこちらから何も聞いてないのに、喋り捲る親父です。が、その日は何も喋らず店に帰って行きました。
確か店主には、息子さん一人しかいなかったはずです。ずいぶん昔に東京に出て、帰ってきていないと聞いていました。
その日は深く追求して、店主のニコニコ笑顔を壊すことはないと思い、うなずきながら良かった良かったジェスチャーで終わりましたが、やはりどうにも気になってしまい、昨日の土曜日。お弁当をいただく時に、メモを渡しました。
「娘さんはおったんじゃろうかい?」
店主はにーっこり笑い、首を振って言いました。
ここからは店主の一人語りです。方言を標準語に直してお届けします。
『のぶさん。俺は今の今まで、こんなに人に感謝したことはない。
娘が本当に帰ってきたんだもんね。もう絶対に家には戻らないって出て行ったのに、帰ってきてくれた。
そう。元息子ね。俺はあの時、どうしても理解してやれなかった。男が女の格好して、男を好きになって、男のポスターを部屋に貼ってる姿を見て、正直気持ち悪くなってしまった。毎日喧嘩して、毎日罵倒して、そりゃ、出ていくわな。自分を認めてくれる人を探して東京に行ってしまった。それから30年も経った。
でも突然、あいつから手紙が届いた。
私、帰る。部屋はまだある?
ってな。
もちろんある。そのまま残してある。いつでも帰ってこい。まずここへ電話しろ。
短い手紙のやり取りだったけど、俺はあいつの声が聞きたかった。あいつに手紙が届いたその日に電話がかかってきたよ。
しゃがれた声は相変わらずで、もう二度と聞けないと思っていたからもう嬉しくて涙がどんどん溢れてきたよ。
でな。どうして突然帰りたくなったんだって、聞いたのさ。そりゃそうだろう。なんか途轍もない問題を抱えてしまったのか、もしかして借金で逃げなくちゃならなくなったのか、はたまた彼氏のDVか何かで、、、とまあ親心ってとめどもないね。そんな想像が湯水のごとく出てくる。
娘は凛として言ったね。
「心配しないで。私、お父ちゃんとお母ちゃんに謝りたいの。それとね。。。」
そうかそうか。そう思ってくれたか。こちらの方が謝らにゃならんのに。と30年の反省と後悔を吐露しようと思ったら、娘はそれを制してな。
「お父ちゃん。帰ってから話そうと思ったけど、今言うね。あたし、本気で恋をしたの。でも多分、その人とは二度と会えないの。私、その人と出会った時間に毎日そこで待ってたの。でも一度もその人は通らなかった。仲間たちにも探してもらったけど、見つからなかった。その人にかけてもらった言葉には、魔法がかかっててね。」
俺はもうあいつの情熱というか、熱い恋の話に唖然としながらね。でもなんだか嬉しくて聞いちゃったよ。
「魔法?」
「うん。サチアレって言葉」
「幸、あれ?」
「そう。あたしね。耳元で、その言葉を言われた瞬間、電気が走っちゃったの。その電気が言うの。心の底から湧き上がってくる感じ。うまく言えないけど。全身が震えて、涙がブワーッと出てきて私に伝えてきたの。
幸せになれ。君ならなれる。大丈夫。今まで選んできた道は間違いじゃなかったから。苦労してきたんだね。わかるよ。偉かった。でも、もう頑張らなくてもいいよ。つっぱらなくていいよ。もう君は、誰か大切な人に心から幸あれって言える人生を送っていいんだよ。幸せが欲しくて、やってきた東京に、本当の幸せはなかったけど、たくさんの人を笑顔にはしてきたね。うん。頑張った私。ほら、頑張った私を褒めてくれる人は誰?」
「誰や?」
「お父ちゃんとお母ちゃんの顔が浮かんだんや。」
そんなもん、泣かんといられるかい。母ちゃんにも聞かせたかったけど、買い付けにいっとったもんで俺一人カウンターで泣いたよ。
「あたしな、あの人が抱きしめた子、みんな知ってるけど、あの日からどんどん素敵になっていくのを見てきてわかったの。あの人は神様やったんやって。だから、もう現実では二度と会えない。ずっとあたしの胸の中で大好きでいようって思ったの。」
「お前も抱きしめてもらったんか?」
「うん。あの時、夜の仕事に入る前の準備してる時で、先輩に突然「やばい人がいるからすぐ出ておいで!」と言われて出て行ったら、上品な風格のおひげの男の人が道端でお店の子達を順番にハグしてたの。もうなんかね、すごかった。みんなハグされた後、痺れて泣いてるの」
俺は、そこでやっとわかった。そのハグをしていた人が、娘を返してくれたんやと。俺は今の今までこんなに心から、人に感謝したことはない。誰か知らんけど、東京で辛い思いをしている俺の娘を含めたお仲間たちが、一瞬でも癒されて、愛情いっぱいにハグされて、どれだけ救われたろうか。そう思うと、ありがたくてありがたくて・・・』
と、店主は熱く語って帰りました。かなり端折って書きましたが、だいたいこんな感じです。
祥子は大喜びです。
このひと。鈴木さんしかいないじゃないですか。
道端でオネエの皆様とハグして泣かす人なんて、他には考えられませんものね。
祥子がポツリと言いました。
「私にもしてほしい。。。」
いつか、その居酒屋に、鈴木さんと一緒に飲みにいきたいものです。鈴木さん主人公の小説を持って。
私も、できることを全力でやっていきます。
まず、小説を書きます。
お手伝い。よろしくお願いいたします。
はい、もちろん裏取りもできております。。。裏取りするまでもなく、このエピソード、実はこの「道端ハグ事件(?)」の直後に聞いていたのです(@@)
このときのくまさん、仕事の会合先に向かう途中でした。その会合には私も出席しており、会場着くなり、
「いやー、なんか今来る道すがら、なぜか可愛いお姉さんたちにハグされちゃって、僕チョーもてちゃったー!」
と、言ってモジモジと照れていたのです。笑
まあ、普段から不思議おじさんですから、そのときは、この人ならそんなこともあろうか、、、と、よく聞かずに流してしまっておりましたが^^;;
後日、のぶさんからのこのメールでの符合でびっくり!(@@;)
あのときのことだ。。。。と。
それに、「サチアレ」の言葉は、くまさんの口癖です。
写真を撮る時も、「はい、チーズ!」ではなく「サチアレー!」と言うような人です。
ハグしながら、そんなことを口ずさむ通りすがりの人って・・・世の中に二人いるとは思えません^^;
のぶさんの、流れるような文章とあいまって、ひとつの小さな小説を読んだような、スーッと心が浄化されていくような気持ちになったエピソードでした。
こののぶさんが奮起された「小説を書く!」は、こののち、さっちゃんの手に引き継がれ、「また会えたときに」という物語が誕生することになるのです。
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