ゾンビさっちゃんのラブ全開!

もうすぐ70歳になる余命宣告を受けたがんサバイバー。 病室でブログを開設!

涙のクローバー

四つ葉のクローバーを見て涙したのは二回目じゃ。

一回目は、

娘が6歳のときじゃった。

恥ずかしそうに

「お母さん。プレゼント」

と言って、しおれた四つ葉のクローバーを手渡してくれた。

あたしはそれを一瞬、四つ葉だとは思わず、どこかで拾ってきた葉っぱか何かかと思い、あまり感動はなく

「へ〜〜〜ありがとお〜〜ね〜」

といつも通りのテンションでそれを受け取った。

夕飯の支度をする前だったので、少し慌ただしく、その葉っぱをシンクの横に置いておいて、後から棚に置いておこう。枯れたら庭先に捨てよう。そのくらいのものだった。

娘は、人の気持ちを察する子だった。

おそらく友達に、四つ葉のクローバーってものは、幸運をもたらすラッキーな葉っぱだと聞いたんじゃろう。

いつも忙しいあたしに、少しでもほっこりしてもらおうと、必死に探してきたであろうしおれた四つ葉のクローバー。

なんの感動もない、いつも通りの忙しい母親。普通すぎるあたしの態度。娘からのプレゼントを、事もあろうにシンクの横に追いやり、さらには、あとで始末しようなんて考えてるあたしの顔を見て、悲しくなった娘。

目にいっぱい涙を溜めて、その葉っぱと、あたしの顔を見比べて、一瞬ふっと微笑んでキッチンから出ていき、スーッと寝室の方に行ってしまった。

その雰囲気を見たあと、まな板を出し、包丁を出し、冷蔵庫からキャベツを出し、さあ切ろう、としたその時、、ハッとするあたし。

何かやらかしたぞ。あたし!

横に置いた葉っぱを眺める。しおれてる。

あれ?

この葉っぱは、ただの葉っぱじゃなかったのか?プレゼント、ゆうとったな。

そっと持ち上げて、その葉っぱを静かに広げてみれば、、なんと、、

「四つ葉じゃあーーーー!あかん。あかん。今のあたし、あかんかった。最低やあーーー。」

その葉っぱを持ってすぐさま娘を追いかけて、寝室に行くが、居ない。

隣の部屋にも居ない。

どこだろう。どこに行った?

外に出た気配はなかった。くつは?

ない!

ああ、音を立てずに出たんだ!あたしに気づかれまいと。


あたしは、娘のあの悲しそうな顔を思い浮かべながら最悪の想像をしていた。当時住んでいたところには池が多い。少し歩くと海もあるし、川もある。危険なところがたくさんある。

自ら飛び込むことはないだろうと思うが、あの悲しそうな顔と、最後にふっと微笑んだ表情が気になって仕方がない。


みぃちゃん。どこ?

どこにいる?

声がだんだん絶叫に変わっていった。

「みぃーーーーーーっ!!」


近所の人が心配そうに出てくるし、窓からどうしたんと尋ねてくるし、黙って指差してくれるおじいちゃんもいて、あたしが娘を必死に探していることを察して、皆、助けてくれた。

娘は猛スピード自転車で、お寺のほうに走っていったという情報を得て、あたしは全力で駆けた。

補助輪付きのピンクの自転車がお寺の門の前に置いてあるのを見て、まずホッとして、娘の姿を探すが、近くには見えない。

あたしは息が切れて声を出せない。小走りに、黙って娘を探した。


そして、見つけた。


お墓の奥にある空き地(いずれお墓になるスペース)でうずくまっている娘。

あたしは、絞り出すような声で、

「みぃちゃん!!」

振り向いた娘は、あたしを見てびっくりしたのと同時に立ち上がり、手に持っていたものを後ろ手に隠した。

「みぃちゃん。ごめん。ごめんよ。さっきは。これ、お母さんにプレゼントしてくれたの四つ葉のクローバー。あなたの気持ちもわからんと横に置いたりしてしもうて」

すると娘は、首を横に振りながら(違うの、というジェスチャー)あたしに差し出した。

「さっきのは枯れてしもうたけぇ、これが本当のプレゼント。はい!」

その小さな手には、生き生きとした四つ葉のクローバーが3本握られていた。

「お母さんに、いいことたくさんありますように!」

その娘の声に、あたしは涙を止めることができなかった。

こんなバカで間抜けな母親に、あなたはどれだけ優しいの!

娘を抱きしめて泣いた。

娘が
「お母さん。さっきのは枯れてしもうてごめん」
と言うもんだからあたしは急いで首を振って言った。

「ちっとも枯れとりゃせん!少しだけしおれとっただけじゃ。そや、しおれとったんは、あんたがこれを見つけて、お母さんにあげよう思って、そっから長い道を歩いて、四つ葉が曲がったり折れたりせんように、そのあったかい両手に挟んで持って帰ってきたからしおれたんじゃろう。」

と、娘の顔を見た。娘はびっくりした顔でうなずいた。なんでわかるん?という顔じゃ。

「ああ、そんで今、ここまで自転車できよったんは、今度は枯れんように早く持って帰るためじゃろう。なあ」

娘は再びびっくりした顔でうなずいた。

「ほらあ!やっぱり、そうじゃろうがーーーーーー!」

また抱きしめた。愛おしくて仕方なかった。

あたしは、娘の可憐な気持ちに瞬間的に寄り添うことができなかったことを恥じた。プレゼント、と言うからには、特別な気持ちがあったはずで、それをその時受け取れなかった自分を責めた。

しかし、その反省の涙を止めたのも、娘だった。

「お母さん。お父さんの分も一緒に探そ」

「え?」

「ここ、たくさんあるから踏まんようにそおっとそおっと歩かにゃおえんよ(笑)」

とあたしの耳元でささやいて、微笑んだ娘。一瞬で涙が止まった。

「わかった。みぃちゃんの言う通りにする。よおし。お父さんに四つ葉のクローバー持って帰ってびっくりさせっちゃろうな」

涙を拭いて、あたしたちはキャッキャ言いながら探した。あたしは、その幸せを今でも鮮明に覚えている。

その四つ葉のクローバーが、今度は福井から届いた。

福井のみーちゃんのご友人(若いお母さんとお子様)が、このブログを欠かさず読んでくださっていて、さちこさんにこれを渡してね、とメッセージを添えて、私に送ってくれたんじゃ。

泣けた。。

四つ葉のクローバーには、想いが詰まってるから泣ける。

これが二回目の涙。

あたしの病気を知っていて、母と子が懸命に探している姿が思い浮かぶ。

「さっちゃんにあげようね〜。きっと喜んでくれるね〜」

と言いながら。

「はい!最高に喜んでますゾウーーーー!!!」

四つ葉のクローバーは見つけるのが非常に難しい。ほとんどが三つ葉。その中から探し出すのは至難の技。だからこそ価値があるし、だからこそラッキー。

どれだけ時間をかけて、それを探し、どれだけ時間をかけてそれを保存可能なものにして、あたしに美しいまま送ってくださったか。。それを思うとまた泣ける。

そして、その温かい思いに触れて、あたしはまた元気が出る。出まくる。こうして記事が書ける。

人の心というものが、あたしを救ってくれる。

救われたこの心を使って、また表現する。

人は、そうやって社会にお返しをしていくのかもしれんな。と思う。

四つ葉のクローバー。

命のプレゼント、いただきました。

ほんにほんに。

ありがとう。

おかげで、パワー充填じゃ!!!



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福井から幸運のクローバー



 

 

▽オットの手記による、実話を元に、ドラマ脚本書いています▽