昔、町内会のお手伝いをさせていただいた時、日曜日の午前中。町の公民館で週に一回のサンデーコンサートを企画して、それを運営していたことを今朝思い出した。
「今日は日曜!サンデーコンサートだね!」
娘がまだ5歳。サンデーコンサートを毎週楽しみにしていたことを不意によぎった。 当時、最初の旦那と離婚を決意していた時期で、負の力に負けそうになっていた時代じゃな。
娘は、日曜日がやってくることを、サザエさんより楽しみにしており、
「次のサンデーコンサートは何するんじゃ?」
「次は手品もええんじゃない?」
と、さも楽しみにして、あたしを盛り上げてくれていた。
コンサートが終わると、夜の食卓は二人きり。
コンサートが素晴らしかったこともそうじゃが、反省点や改良点も出しつつ、とことん話し合った。
さすがあたしの娘じゃよ。
お客様が喜んでいるかいないか。
演者が楽しんでいるかいないか。
特に、準備・環境が整っていない状態でのコンサートについてはご意見も厳しかった。
その反省をあたしは胸に刻み込み、次はもっと上手くやろう。次はもっといいコンサートにしなくちゃ。と躍起になって力を注ぎ込んだ。
おかげで、離婚の苦しみからは、日曜日が来るたびに、そしてその準備をしている時間は逃れることができたんじゃ。
娘はあたしに、離婚問題以外の「考えなくてはならないこと」を与えつつ、あたしが元気になるように「しむけて」くれていたんじゃと、彼女が死んでから気づいた。
毎週の企画は、結構辛かった。1年間続けた。合計44回の公演を成功させた。大河ドラマかサンデーコンサート。と、後々ののぶさんは、その苦労を知らないのにそう揶揄した。いや尊敬の念を込めて言ってくれた。今じゃあたしの自慢じゃ。
町内のお客様は、最初は4人だったのが、最後のコンサート。忘れもせん。昭和61年。3月30日。
会場は超満員。前代未聞。
入り切らず、窓を全開にして、入れない人は外に漏れ聞こえてくるコンサートを楽しむことになるくらいすごい人数が来た。
その日は、春の香りで充満していて、風が心地よく、婦人会の皆様には特別に炊き込みご飯のおにぎりと、豚汁を作っていただき、さながらお祭りの様相でとり行われた。
その日、突然。娘が、私もステージで歌うと言い出した。もちろんプログラムにはない。
何を歌うの?
と聞くと「内緒」と笑う。
地元のビートルズコピーバンドで沸きに沸いた後、司会の方から紹介があり、本当に娘がステージに立った。
伴奏はない。
マイクを持って、誰かを探す。
視線が止まったのは、ホールの入り口付近で立っていたあたし。
あたしは小さく手を振る。 娘は頷いて、あたしの方を向いてアカペラで歌い始めた。
膝を可愛く屈伸させて、リズムをとりながら。 その曲は、つい4日前くらいに始まったアニメの主題歌だった。
そういえば、テレビから流れるその曲を聴きながら、
「私、この歌好き!」
と言って、ぴょんぴょん跳ねた。 娘は当時はまだ字が読めない。歌詞がテロップで流れてはいたが、それを読んではいない。
歌詞をしっかり聞いていたのか。それを覚えたのか。実は幼稚園の先生に協力していただいた、とわかったのは卒園式の時。その話はいずれ。
ステージでアニソンを歌っている娘の姿に驚いたのと同時に、あたしに対するメッセージだとよくわかった。
アニメのオープニングは、本来の歌詞を切って貼ってのいいとこ取り。
どうにも意味がつながらないところもあったりする。
娘は、あたしに伝えたいことを付け足して歌にしてくれた。ほぼオリジナルソングじゃ。
「悲しみよこんにちは」アニメオープニング版
作詞 森雪之丞
作曲 玉置浩二
手のひらのそよ風が 光の中 キラキラ 踊り出す
おろしたての笑顔で 知らない人にも おはようって言えたの
思い出 溢れ出しても 私の元気 負けないで
平気 涙が乾いた後には 夢への扉があるの
悩んでちゃ 行けない
そうよ 優しく友達 迎えるように笑うわ
きっと約束よ
不意に悲しみはやってくるけど 仲良くなってみせるわ
だって約束よ
今のあたしには、おろしたての笑顔もない。元気もない。涙も乾かない。夢への扉なんて見えない。友達を優しく迎えるように笑えない。悲しみがやってきても仲良くなんてできない。
いつも何かに怒っているあたしを見ていた娘からの、切なるエールだった。
娘は天才だったのかもしれない。
一回聞いただけで、そのメロディーを覚えて、我が家に置いてあるピアノで弾いてしまう子だった。歌詞まで覚えてしかも、人前で歌えてしまうなんて。
将来は歌手!?などと、心がざわめく瞬間も何度かあった。堂々としたもんじゃ。
万雷の拍手でサンデーコンサートが終わった後、娘に聞いた。
「お歌、とっても上手だったね。でもどうしてあの曲にしたの?」
少し考えた娘は、
「だって、あのお歌の時のお母ちゃん、笑ってたんだもん」
あ、それは、はしゃいでるあなたを見て可愛かったから、、と言いかけて気づいた。
笑えるんだ。あたしは。
この子を見ていて幸せになれるんだ。この子がいるからあたしは笑顔でいられるんだ。この子が悲しむことをしちゃダメだ。この子のためにあたしは、笑顔でいないとダメなんだ。 その答えを聞いて、あたしは心が晴れたような気持ちになった。
おろしたての笑顔で娘を見た。娘も優しく友達を迎えるような笑顔で応えてくれた。
この子は、あたしを元気づけるために、ステージに立ったんだ。
と思ったら、泣けてきて。
笑いながら涙がこぼれた。
「ありがとう。」
と言って娘を抱きしめると、小さい手であたしを抱きしめ返してきて、背中をトントンとたたいてくれた。
それはあたしが、泣いている娘をあやすときにする背中トントン。
今 あたしがされている。。。
もう止められなかった。
苦しかった胸のつかえが取れていき、それと同時に涙腺が崩壊した。 周りの人がそれを見て、祥子さんお疲れ様。1年間、全てのコンサートをありがとう。どれも素敵だったわよ。本当にご苦労様でした。
と娘の頭を撫でながら、慰労してくださった。
ますます泣けて。。。
思えば、しゃくり上げて全力で泣いたのはこれが初めてじゃった。
そんな思い出に浸っておったら、思いついてしまった。
サンデーコンサートの復活。
毎週じゃなくてもいいから、誰かやってくれないだろうか。
そう思ってくまさんに相談したら、
「今日はたまたま、友人の個展に来ている喫茶店が音楽ができる設備を整えた場所です。譜面台も借りれそうですし、やってみましょうか?配信はできませんが、録画して後で送りますね〜」
と気やすいお返事。 早くも実現する!
せっかくですから、サンデーコンサートの初っ端は、祥子さんに書いていただいた歌詞の「また会えたときに」と「あんたに」の2曲にいたしましょう。
と。
動画を撮っていただいたようなので、それが届いたらまた紹介させていただくとして。
楽しみに待つことにする。
またこれで生きる理由ができた。
〜ゾンビより愛を込めて〜
↑突然のリクエストにより、サンデーコンサートをすることになり、準備中のくまさん。
↓くまさんのご紹介記事は ↓
↓ここから始まっておるぞ。↓
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