ゾンビさっちゃんのラブ全開!

もうすぐ70歳になる余命宣告を受けたがんサバイバー。 病室でブログを開設!

フェリーを止めた男 2

オットはこの人のことが大好きで(๑╹ω╹๑ )

何が好きだったかというと、ひけらかさないところじゃった。どんなに善行を積んでも、それを人に自慢したりしない。それを頑なに守って生きているから、高い評価を受けることもなく。

ふわふわとしたキャラクターで掴みどころがなく、案外色々失敗ばかりしていたり、会話中に地雷を踏んで相手に憤然とされたり、組織の中にいるとほんわか温かくなったり、希代のムードメーカーとして君臨し、人が嫌がる問題や喧嘩を仲裁しちゃったり、今もなお、どこか憎めない人のいいおじさんとして存在感を示している。

こうして昔の事を暴露されたら、最初はびっくりするじゃろう。でもって、人にこの事を話題にされかかったら、

「昔は若かったから^^」

とかなんとか言って、話題を広げないよう、

静かに逸らしていくじゃろうて。


そうはさせるかい(笑)


オットの手記を読んでいくうちにわかったんじゃ。

こりゃ、のぶさん。全力でこの人を表に出そうとしてるなと。表に出して、人に知ってもらうことによって、

生き方に迷っている人や、

問題が生まれて困っている人や、

自分の存在が小さく思える人や、

どうしても生きづらい繊細な心を持った人たちが、

きっと少し救われる。あたしが救われたけぇな。

本人は嫌がるじゃろうが、オットの遺志じゃけえ、すまん。引き続きオットの遺した文書からの暴露は続くぞ。



再会は、フェリー模型の前で

約30年前、フェリーを止めて子どもの命を救った赤Tの人は、今も全国を飛び回っている。そんな彼から私に電話が入った。

「のぶさん。ご無沙汰しております。今出張でして!久々に近くまできています〜!突然ですが明日、会えませんか?先日、従兄弟さんのご記憶でフェリーのお話(メールで長文報告済み)をしていただいた内容に、少し付け加える出来事が先ほどありまして!」

「面白い!もちろんです。どこに行きましょうか?」

「明日新幹線で帰りますので、駅近くのレストランはいかがでしょう。」

この電話を受けた時、祥子は友人との旅行中で不在。私だけでこの話を聞いて、後々のために記録することになった。責任重大だ。

翌日、久々に会った元赤Tの人は、相変わらず笑顔が最高に輝いていた。

しかし、話はすぐに終わってしまった。

元々、出来事を順序立てて話をすることが苦手な人であったが、

「実は昨日、昔フェリーで助けたお子さんのお母さんに偶然ホテルで会って、泣きながらお話しできたんです。実際はお母さんのお顔を覚えていなくて、最初はびっくりしたんですが、あの子の名前が突然蘇ってきて、自分でもびっくりしました。で、フェリーはまだ動いているそうです!」

ときたもんだ。。。

全くドラマチックではないし、オチがない。感動も薄い。これではダメだ。私の責任感は、やがて使命感に変わった。

私が塾でやっているように、子どもたちの素晴らしい能力を開花させるための実践を、今ここで使うべきだと思い、超ヒヤリング術を駆使。

まとめたのが下記の文章になる。

 

・・・・・・・・・・・・


たまたま予約したホテルでの出来事。

チェックインの手続きを待ちながらロビーを見渡していると、ショーケース内に飾られた、懐かしいあのフェリーの模型があった。結構大きなその模型を見た瞬間。

懐かしくて思わず、フロントマンに

「あのフェリーってまだ動いてるんですか?」

と聞く。すると

「あれは模型ですので😭」

との返事。

「あ、いえ、あれはそうですけど、本物の島巡りフェリーのことです💦稼働はしてるんですか?」

と尋ねると、焦ったフロントマン、

「あ、もちろんまだ動いてますよ。」

と食い気味で説明。

「でも珍しいですよね〜。フェリーの模型って〜〜」

フロントマンも、そうなんですよ。という顔をして、

「実は、こちらで20年くらいかな、お預かりしてるんです。当ホテルでお掃除の仕事をしてくださっている方が、これをぜひ飾っておいてほしいということで、寄贈していただいた形だそうです。」

寄贈されたフェリーを見ているうちに、例の風景が思い出されてきた。

「ところで昔、あのフェリーから子どもさんが落ちたお話って聞いたことありません?」

フロントマンは不思議そうな顔をして、

「さあ、そんなお話は聞いたことがございませんが、、」

それはそうだろう。20代半ばであろう彼が知る由もない。

助かったあの子は今頃どうしているだろうか。少しの懐かしさと、その後のあの子と、母親の人生が良い方向に行ったかどうかの希望と不安が入り混じった感情になって、チラリとまたフェリーの模型を眺めた。

チェックインを終えて、また何か気になって、もう一度そのフェリーの模型の近くに行くと同時に、玄関の自動ドアが開いて初老の掃除婦さんが入ってきた。

目と目が合って、ビビビ、とはいかない。

そのホテルは玄関から入ると左奥にトイレがある。そこに向かう掃除婦さんと、フェリーの模型の置いてある場所に向かう人が交差する。

一瞬思う。 あ。この方なら30年前のこと、覚えているかしら。。あの時落ちた子どもさんの、それから、がどうしても気になってきた。

「あの、すいません。こちらのフェリーって、島に渡るためのものですよね?」

もう一度目が合った。瞬間、眉間に皺が寄った気がした。そしてその目は探るような目で、真剣そのものだ。お客様に対する視線ではない。

「あ、、はい。島に渡ったり帰ってきたり、、お客さん、乗ったこと、あります?」

「ええ。昔ですが、一度。懐かしくって。」

「昔って何年前くらいですか?」

笑顔がないその女性の顔がますますこわばってくる。

「もう、30年も前か。。まだ航行してるんですか?」

と聞くが、答えはない。その代わり、真剣な顔がほぼ怒り顔になっている。これはもしや、悪いことを聞いたのかもしれないと思い、失礼しました、とその場を去ろうとした瞬間、

「あの、あなたさまは、息子を助けてくれたお方じゃねえやろうか?」

「え?」

言葉がこの地方の言葉遣いになっている。

「寒い海に飛び込んで、息子を、助けてくれたお方じゃねえやろうか?名前がわからんけえ、探そうにも探せなんだけぇ、せめてフェリーの模型をホテルに置いときゃあ何かきっかけがあるか思うて、祈りを込めてここに置いてもろうとったんじゃ」

一気に話す女性の声に押されながら、記憶の糸をたどってみると、朧げに見えてきた叫んでいる女性の顔。

助かった子どもを抱きしめて泣きじゃくる母親の顔。

そうか、この人はあの子のお母さんだ!

名前は確か、ゆうや君だったか。

「もしかして、ゆうや君のお母さんですか?」

その瞬間、お母さんの顔は歪み、うああああと大きな声を出して泣き崩れた。

「やっと見つかったああああ!ようぞここにおいでくださった。やっとこれでお礼が言える。あの時は、あの時はもう気が動転してショックがひどうて、何もお礼もできんで。もうしわけんで悔しゅうて、後から後から後悔して、この30年、なんとか探そうと色々努力したんじゃ。せーでも見つからなんだ。やっと、ここで、こうして会えるたぁ。ほんに、神様。ありがとございます。」

この奇跡の再会に、泣きながら何度も何度もお礼を繰り返したお母さんは、今現在のゆうや君のことを話して聞かせてくれた。

実はなんと、落ちて命拾いしたフェリーの会社に就職し、今もそこで働いているとのこと。

ほっとした。ああ良かったと、胸を撫で下ろす。

一命を救われた記憶の中で、海上で助けを待つ間にお兄さんに言われた言葉をずっと覚えているそうで、その言葉の一部をお母さんは伝えてくれた。

「君はね。将来、たくさんの人を助ける人になるんだ。

本当は死んでもおかしくないのに、助かった。

ってことは、その命を今度は、誰かのために使わなくてはいけない。

だから、こんなところで死んではいけない。君を待っている人がいる」

と。

その言葉を信じて生きているゆうや君の行動には、全てに芯があり、親の自分ですら学びが多いのだという。

立ち話もなんだからと、話を聞いていたフロントマンが、ロビーに席を作ってくれた。

お茶まで出してくれて、そこでゆうや君の現在を報告してもらえた。 赤T、つまり若かりし頃のくまさんは、たまたま訪れたホテル(しかも変更してそこ)でずっと会いたいと思い続けてきたゆうや君のお母さんに出会えたこと。

奇跡としか言いようがない。

この話はまだ続く。


次回は、あたし(さちこ)が活躍するぜよ

〜ゾンビより愛を込めて〜

フェリーを止めた男/劇人くまさん


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