ゾンビさっちゃんのラブ全開!

もうすぐ70歳になる余命宣告を受けたがんサバイバー。 病室でブログを開設!

教育講演会「母の愛」4 平井くんの涙

<昨日の日記>の続き


くまさんのお話は、正直で、痛い。

心の中に入ってくるし、それが居座り続ける。

恐怖を覚える時もある。

今回もそうじゃ。

そんな時代もあったのね、で終わらせることのできない問題も孕んでいるし、聞いているうちに胸が締め付けられる。なのに、くまさんの笑顔の話し方は、内容に反比例してホッとする。文章で現すだけでは伝えきれないじゃろうが、ぜひ、最後まで読んでいただきたく思う。

今回の話は、友情物語じゃ。


僕は、問題児でした。小学校4年生時代は、先生に嫌われました。僕は、他の子と違うおかしなヤンチャ坊主ということで、教室に入れてもらえませんでした。

ということで、毎日廊下で授業を受けてました。もちろん、学校の勉強についていけませんし、友達からも変なやつだと思われていて、よくできる一部の子からはいつもばかにされていました。

先生にとっては都合が良かったのかもしれません。毎日、廊下に「こうなってはいけないお手本」がいるおかげで、授業が静かでやりやすくなったはずでした。それを感じてもいたので、あえて反発もせず、先生がそれでいいなら、受け入れようと、立ち続けました。そのことを母に伝えたのは、ずっと後のことです。

ある日の一限目。

僕が、当たり前のように廊下に行くと、先生が「偉い!」と褒めてくれました。理由は、自分から廊下に立ったからです。いつも叱られ続けている僕でしたので、褒められるとなんでも嬉しいもので、訳がわからずパワーが出ました。無視されるより、見ていてもらえる方がずっと嬉しい、というおかしな瞬間でした。

しかし、廊下に立っていると、疲れます。

昔のことです。バケツの水を両手に持たされることもありました。昭和ですから^〜^今はそんなことしたら体罰です。問題になります。昔は普通。

さて、給食を食べ終わり、昼休み。

先生も職員室で、そこにはいません。一番ホッとできる時間でした。

その時、当時、唯一の友人であった平井くんが僕のそばに来て、言いました。

「やい。エッチマンツー。」

平井くんは根っからのエッチマンで、スカートめくりの達人でした。僕は弟子になったので、ツー。と呼ばれていました。

ちなみに、スカートめくりにはちゃんとルールがあって、他の誰も見ていない時、滑り込みながらスカートをめくり、めくった本人はスカートの中を絶対にのぞいてはいけない。

という、、僕としては、理不尽なルールでしたね。しかし、それを守ったので、はえあるツーの称号をいただいたわけです。

平井くんが、僕を呼びます。

僕も、『指令があれば、いつでも動きますよ!』という顔で

「はっ!なんなりと!」

と言うと、

「5時間目は、教室に入ればいいでな」

とまじめくさって言いました。

俺がこうちゃんを中に入れてやる。と笑わずに言うのです。平井くんは、僕が毎日廊下に立たされているのを苦々しく思ってました。いつも、それでいいんか?勉強ができんようになるで?それでいいんか?と、何度も問題提起してくれてました。

平井くんは、クラスでは勉強ができる方で、言葉もどこか都会的で、1年生の時に転校してきた子であることくらいしか知りませんでしたが、僕とは馬があって、仲良くしていました。

運命の5時間目が始まりました。

僕が廊下で、中庭の梢に遊ぶ小鳥たちを眺めている時、平井くんの声が聞こえました。

「先生。こうちゃんを中に入れてあげてください。」

すると、担任の先生が

「なんでや」

と言い放ちます。体育の先生ですので、とても怖いんです。それでも怯まず、平井くんは言います。

「こうちゃんは、何も悪くないです。先生が悪いです」

と言いました。

僕は、焦りました。平井くん、そんなこと言ったら君も廊下やぞ!

「こうちゃんが廊下で勉強できるはずがありません!」

先生は、笑いながら、

「勉強したくないから、自分で廊下に立ってるんやぞ?」

と言うと平井くんも負けません。

「勉強したくない人を勉強できるようにするのが先生じゃないんですか?」

先生も意地になって、

「勉強したくない奴に教える暇はない」

と言ったので、平井くんは声を高くして言いました。

「じゃあ、僕は、先生から教えてもらいたくありません。先生から勉強したくありません。だから廊下に行きます。」

と言って、廊下に出てきちゃいました。


僕はもう、そのやりとりを聞いていて、怖くて怖くて、そしていつの間にか涙が溢れてきて、平井くんが笑顔で出てきたのを見てドキドキして小声で、

「あかんよ。平井くん。先生に謝んね。平井くんは、ちゃんとしとかなあかんよ」

と言うと、

「大丈夫や。こうちゃんが辛いのはもう見たくないんやって」

とまた笑顔。僕が持っていたバケツをひったくるように持って、中庭を眺めながら、平井くんはまた笑ったんです。笑ったのに、赤いほっぺたから涙が流れてて。

体も震えてて。

それを見て、勇気を振り絞って、僕のために先生に意見をし、自ら廊下に出てきた恐怖に打ち勝とうと頑張ってる平井くんの、強さと優しさを見たんです。

僕は、憚らず泣きました。なんだか嬉しくて。

そしたら、平井くんを慕う友達が、続々と教室から出てきました。最初は二人。そして7人。女の子も一人いました。

担任の先生は根負けして、全員教室に入れ。と言いました。

僕もその日から教室で授業を受けられるようになりました。

友達も増えました。

遅れていた授業の内容も、先生ではなく、友達に教えてもらいました。

おかげで、4年生のカリキュラムを無事終えて5年生に上がることができたのですが、平井くんは5年生になった春。引っ越していってしまいました。

引っ越すとは言わず。

でも、あれが別れの言葉だったんだなと思えるシーンはありました。

二人で作った秘密基地があったのですが、

「ここはこうちゃんに全部あげる。それから、約束してほしい。こうちゃんのお母さんを大事にしてほしい。」

僕は、なんでその時、突然そう言ったのかわかりませんでした。

しかしそういえば一度だけ、平井くんが僕の家に遊びにきたことがあり、母が、笑顔で歓待してくれたことがありました。その時のことを大切に思ってくれているのかと思いあたったのです。しかし、

「こうちゃんには言ってなかったけど僕、お母さんがいないんや。もう一生会えんのや。」

と告白されたのです。

衝撃でした。お母さんがいないという言葉が信じられませんでした。僕にとっての母は、いることが当たり前過ぎたので、お母さんがいない人が目の前にいる現実に瞬間的に対応しきれませんでした。何も言えずにいると、

「こうちゃんのお母さんは、すごいんやぞ。僕は、わかるんや。こうちゃんのお母さんはすごい。」

2回言った意味は、今ならわかります。

僕の友達だということで、母は、平井くんに対して、全幅の信頼を持って接していたことがわかりました。

遊ぶとお腹が空くからと、小さなおにぎりを作ってくれたこと。

「これからもこういちをよろしくお願いします」と丁寧に頭を下げたこと。

笑顔で迎え、笑顔でさよならをしたこと。

「またおいでね」と、本気で言ってくれたこと。

人に対し、それが子供だったとしても、対等に、尊敬も持って応ずる母に、平井くんは感銘を受けたのでした。

母を誉められたことでうれしかった僕は、大好きだった平井くんが突然いなくなったことで、自らの心を落ち込ませることが、とても簡単でした。

それを知った日。

僕は、教室でゲーゲー吐きました。平井くんという僕の味方が消えた。そう思っただけで、苦しくて、狂ったように咳が出て、所かまわず吐き散らかしました。

それを見ていた友達が、背中をさすってくれたり、一緒に泣いてくれたり、平井くんのことが大好きだった僕を、皆が慰めてくれました。

そんな、のたうちまわる僕の姿をみた先生が、「またいつか会えるんやで」と、きっと不可能なんだろうなというニュアンスで言ってくれたことで、やっと冷静になれました。

ツーとしての誇りを失うところでした。またいつか会うためには、こんな僕ではだめだ。苦しんでいる友達を救えるエッチマン平井を師と仰ぎ続け、僕は涙を拭いて前に進むんだ。と考え直し、小さな人生をやり直すことに決めました。

僕は、本当に良い仲間たちに囲まれて、育ったのです。

こうして小学校時代は、友達に助けられ、先生には厳しくしつけられ、やっと中学に進むことができました。

弱くて、心の繊細な僕は、中学生で、大きな大きな試練に翻弄されました。

(大きく深呼吸)みなさん、お話はこのまま続けますね?大丈夫ですか?辛くなってきた?大丈夫?

心が苦しくなってきた方、遠慮なく言ってください。

その気持ち、よくわかります。人の気持ちに寄り添うということって、本当に大変です。皆様の心が、僕に、僕の過去に寄り添ってくださっていること、よくわかります。その温かい気持ちが痛いほど伝わってきています。

ありがとうございます。

次のお話で、昔のエピソードは終わります。

それをお伝えして、今日の本題に入っていきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

 


と言って、深々とお辞儀をするくまさん。

会場は、全員が、くまさんの過去の話を聞き逃さないようにと、一人も席を立つことなく、座っています。緊張感が、張り詰めている状態です。こんな講演会はあたしは体験したことがない。

なんと表現すればいいんじゃろうか。

言葉にすると安直じゃが、あえて言葉にすると、

「体験型」

の講演会。くまさんの話し方もあるんじゃろうね。聞いていると、なぜか肯いてしまう。そうそう。そうなんだよね。確かに。わかるわかる。あーあたしもそう思う。だって、やっぱり、だから、なのに、と、くまさんの話に心が参加しているんじゃ。

これは不思議。そこに入り込めない人もおるじゃろうが、その人はきっとすでに解決法を自ら発見している方じゃろう。あたしは、エピソードを聞いているだけで、くまさんが何が言いたいのかが見えてくるもんじゃから、心がなかなかに忙しい。

次回は、中学生編。

みなさん。覚悟しいや。キツイぜよ。

でも、すっきりするけぇ、最後まで読んでのう。

つづく

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